墓まで持って行く、という覚悟

町中でクライエントとすれ違っても、自分から挨拶はしない。

なぜなら私の仕事には、守秘義務があるから。

 

ソーシャルワーカーと関わりを持ったことを知られたくない。

そう思うのは当然だし、自然なこと。

実際に、目が合って俯かれたこともある。

「気にしていないよ、安心して。誰にも話さないから」

そう言いたくなる気持ちを抑え、何事もなかったかのように、その場を流す。

 

精神保健福祉士法によると、

 

(秘密保持義務)

第四十条  精神保健福祉士は、正当な理由がなく、その業務に関して知り得た人の秘密を漏らしてはならない。精神保健福祉士でなくなった後においても、同様とする。

 

とある。

 

つまり、精神保健福祉士として仕事をしているときは守秘義務があるのは勿論のこと、その仕事から離れた後も一生誰にも話してはいけません。

ということ。

だから、少なくとも私は秘密を抱えたら墓まで持って行く、という覚悟をもって仕事をしている。

 

これは、名前を伏せれば人に話をして良いということではない。

ご本人の同意があれば良いけれど、同意がないまま誰かに話すことは、大問題だ。

ただし、命の危険のある場合で、同意を取ることが困難な場合は例外がある。

その部分が「正当な理由」にあたるのだと思う。

 

だから、ここに書いている【ショートストーリー】は、ご本人の同意のある方か、精神保健福祉士として関わっていない一個人として出逢った人の物語。

それも、可能な限り個人情報は記載しないこととしているし、フェイクもある。

もしかしたら、ゼロからの作り話もあるかもしれないよ。

 

「自分のことが書かれるのでは」とは思わなくて大丈夫。

 

私は、ソーシャルワーカーとなんか出逢わなくて済む人生なら、その方が幸せだと思いながら仕事をしている。

ただし、出逢ってしまったのなら大人子ども問わず、どの方にも心を尽くし接していきたいと思っている。

 

これは何度でも言う。

私とは、出逢わなくていい。

でも、出逢ったのなら後悔はさせない。